生きていることの恐怖
ある夜、寝室の壁に小さい蛾のようなものが止まっていた。3~4cmぐらい。
虫は苦手。
そして、なるべくそのまま外に出してあげたい。
椅子に登り、透明なビニール袋をかぶせた。
蚊やハエのように素早くはなく、おとなしく袋に収まった。
ところが、捕まったことに気付くと、袋の中で飛び回った。
そのときの恐怖ったら!
袋の中でぶつかりながら、生き生きとしているのを、手の平や振動で感じて、「ひぃっっ!」と思ったが、声には出なかった。
生け捕りにした安心感をキープしつつ、ベランダの窓を開け、袋をバサバサ振り、暗くて見えないけどきっと外に出ただろうと思って、窓を閉めると、腕に虫がぶつかった!!!!!
うぎゃー!だか、ひゃ~っ!だか、
なんて叫んだか覚えていないけど、瞬発的にとにかく大きな声が出た。
結局、虫は家の中で行方不明になり、どこかにいる。
まあ、仕方ない。見えないものは探せない。
その後、ふと思った。
虫の何が怖いのだろう。
大きさで言えば、私の方が果てしなく大きい。
その時思い出したのは、袋の中で生きている実感。
ああ、もしかしたら生きものが怖いのかもしれない。
例えば、あの虫が死んで床にころがっていたら、「ああ、なんだ、死んでるのか」とホッとする気がした。
え、じゃあ、虫が怖いんじゃなくて、生きていることが怖いの?
私は、生きていることが怖いのかもしれない!と思った。
ところが、また考えた。
待てよ。
例えば、道端で人が死んでたら、それは怖い。
その場合、もし生きていたら「ああ、生きてたのか、よかった」とホッとする気がした。
動物もだ。犬や猫や鳥が、道端で死んでいたら怖い。生きてたらホッとする。
虫は逆。
なに?この違い。
体温を感じるかどうか?
とりあえず、コヒーランスをして、ジャパを唱えて、朝までぐっすり寝た。